2021年度決算 不認定の意見討論  岩崎みなこ

遅くなりましたが、9月議会最終日(2022年10月4日)の意見討論の内容をお知らせします。
総括質疑、個別の事業についての意見はスペースの都合上、要約しました。
不認定とした理由部分は、本会議での意見討論原稿をそのまま掲載します。
経緯と概要は多摩・生活者ネットワークのHPにも掲載していますので、そちらもぜひご覧下さい。

◆総括質疑で質したことについての意見
DXについて
昨年度、情報システム課が情報政策課となったのはDXへの本格準備と受け止めています。各所管と情報政策課の連携により、庁内の仕事のDXへの適不適の見極めを。利便性の追求、非来庁型サービスは市民ニーズである一方、技術革新や社会変化についていけない層は必ずあります。必要な対応ができるバランスよい行政サービスを。

投票に行けない高齢者等について
2025年問題を前に、国は「投票に行きたくても行けない」高齢者のために移動投票所等の工夫も可能との報告書を出しています。地理的高低差、高い高齢化率の多摩市は、一方で健幸都市を掲げています。投票できない市民がいることを喫緊の課題として実態調査、対策を。

インクルーシブ教育について
2014年の「障がい者権利条約」批准以来初めて日本は国連の審査を受け、政府は質の高いインクルーシブ教育に関する計画を策定せよとの勧告を受けました。
2021年度は多摩市においても国同様、1学級35人以下にする5ヵ年計画の初年度。学校が社会の縮図として真のダイバーシティーを目指すため、今こそ「通常学級でこそ特別支援教育を行うべき」と言うサマランカ宣言の実現を。2021年度を多摩市版インクルーシブ教育のプロセス構築元年として前進を。

「学校給食の牛乳に関する陳情」採択について
9月29日の多摩市教育委員会において「学校給食の牛乳に関する」陳情が採択されたことは、牛乳の廃棄量を減らす可能性を見出したとともに、子ども若者の権利を保障する条例の精神に基づくと高く評価します。地道に取り組んだ市民も子どもたちも、住みやすいまちを自分たちで創れることを実感しました。

◆事業ごとの意見 
生活困窮者等支援事業
しごと・くらしサポートステーションにつなぐ周知・啓発は庁内連携し、コンビニ等の民間事業者にもカード配置等の協力をお願いして下さい。

自殺対策事業
全国的に自殺者が増えていますが、多摩市においては属性や動機が全国と異なる傾向があることがわかりました。社会全体の問題として基礎自治体が取り組む意義は小さくありません。「こころの体温計」などの支援情報周知のツールを、公共施設だけでなく病院やコンビニ等の民間施設にも配置できるよう工夫を。

心身障がい者支援事業(サブカルテ多摩市障がい者差別解消条例推進事業)
適正な予算執行とともに、予算編成過程での市民からの理解や納得を得ることが重要であり、それが障がい及び障がい者への理解の促進につながります。説明の際の表現、専門的な知識がなくてもわかりやすい決算事業報告書の記載など、市民から要望を頂いています。

成人保健対策事業
近隣住戸への受動喫煙を防止するため、条例の規制対象外であるが自宅ベランダでの喫煙について、たま広報で注意を呼び掛けています。結果として、室内での喫煙が未成年の受動喫煙につながらないような取り組みを。

ごみ減量化推進事業
資源化率向上のため廃棄物減量等推進委員の役割は大きいと認識しています。より活躍できる環境を委員と共に考え整備を。

塵芥収集事業
国は今年度からプラスチック資源循環法を施行しましたが、多摩市はそれに先立ち2021年度において容器プラ、製品プラを一括回収しています。市民にプラスチックのさらなる分別をお願いするためにも、現状のプラスチック用20ℓ1種類の見直しを。

都市農業推進事業 
気候非常事態宣言をした多摩市にとって国同様、環境保全型の農業支援は重要。市民に理解を深めてもらい農業経営安定につながるよう、市は生産者の努力の見える化を。また農地の保全には、本市の農地が持つ多面的な機能の評価が不可欠。評価を速やかに行い、農業後継者、市民に対し多摩市に農地がある必要性の理解に繋げていただきたい。
 
道路維持事業
青木場通りと落合けやき通りの交差点での湧水流出については、東京水道株式会社の検査や工事の動きは今年ですが、実際は2020年頃には確認済みでした。水質事故や事故はなかったにしても、今後は速やかな対処をお願いします。

公園整備事業
公園改修、特に誰にも利用するトイレの改修には福祉の視点が不可欠です。これまでのバリアフリー法(国交省)に基づく改修に、例えば、流水レバーの位置など福祉的な当事者視点を加えることで誰にとっても(高齢者、視覚障がい者ほか)使いやすい改善が期待できます。全市的な公共トイレ基準を策定する必要があると考えます。

多摩中央公園改修整備・運営事業
市民説明会やプレイスメイキング社会実験を通じ、積極的な情報共有と市民参画を図っていることを評価します。今議会において委託業者が決定しますが、公園の運営に行政・業者のみならず市民が参加することが、シビックプライドの醸成につながります。「みんなの公園」「多摩市のセントラルパーク」と市民が実感し、個々のことばで「多摩市の良さ」を語れることは、シティセールス推進の大きな武器にもなります。利用者が自分なりの楽しみ方ができる現在の公園の長所も、引き続き大切にしていただきたい。

中学校費
事業別歳出決算額においては、近く予定されている大規模修繕時に工事すれば歳出せずに済みました。額以上に、関係機関とのやりとりに要する時間、職員人件費、 精神的な影響も大きい。教育部局と市庁部局との単純な確認ミスが原因ですが、補正予算でも似たような確認不足の事案が続いていることから、今一度、再発防止に向けたチェック体制など取り組みを。

以上、個別についての討論と致します。

◆決算を不認定とすることについての意見
(以下、本会議での意見討論原稿をそのまま掲載します)

さて2022年度第3回定例会は9月1日から始まりましたが、決算特別委員会は9月16日から28日まで、審査のための質疑が行われました。
決算質疑の最終日の28日、ネット・社民の会派の再度の総括質疑の際、事業報告書であるカルテは決算書を補完するものであるが、重要性をどのように認識しているかとの質疑に対し、決算書と同様、重要であるとの認識が所管からの答弁でありました。
 
その答弁を踏まえるなら、「正確な審査、検証は、重要なカルテが正確であることが前提で審査可能だ」との認識に、所管、市長も立っていると考えていいはずでしょう。にもかかわらず、今決算特別委員会の決算質疑が終わる日になっても、正確なカルテが出されないことが分かりました。

 それと、フェアな市政の会派の白田さんの総括質疑で市長は
「数字は命である。議員の皆様にある意味大丈夫なのかよとの不安を与えたことについて深くお詫びする。誰しも間違いはある。間違いをリカバリーして頂くよう職員には指示しながら仕事にあたって頂くようにお願いしていきたい。」
と述べられましたが、この答弁は今後のことを言われているのだと思います。

確かに予算でしたら、補正などで、とりわけこのコロナ禍、一年の間に何度も出される補正予算により当初予算から動いているわけですが今回は決算です。
すでに、使ったお金を審査してるわけで、ころころ数字が動いたり、まだ数字が決まっていないまま審査することは市民に説明出来ないことです。

市長がいくら今から指示を出そうが、私たち議員に不安を与えたとかではなく、
審査するに足る状況になっていないと言えます。

つまり、これからの事はこの決算の認定については切り離して考えなければならないはずです。
この審査中に「もう大丈夫です。これ以上の訂正はありません」との答弁はなかったどころか、所管からは「今年の決算事業報告書は間違っています」との答弁が再度の総括質疑時点であったのです。

これを受け、ネット・社民の会派としましては、
28日の決算特別委員会の採決では、このような元となる重要なカルテの不確かな状況を受け入れてしまい手を挙げた訳ですが、今一度、認定するとはどういうことなのかを、この5日間会派として改めて考え続けました。

そして、市民に対し責任を持って認定することの意味と重要性を思うと、未だ、決算書と同程度に重要な正確なカルテが出てないにも関わらず、2021年度の決算を認定することは、本来であれば、今後出てくるであろう正確なカルテを踏まえ、認定すべきなのにも関わらずどちらも正しいとして認定することは不可能なのではないかとの結論に達しました。

私たちは、過去は変えられませんが未来は変えれます。
しかし、だからといって、例えば、何かの受験や資格や採用の試験の際、満たない点数で不合格なのに、これからあなたは頑張るだろうから今回は合格にしますとは、ならないでしょう。これから頑張ったり、リカバリーすることは勿論、当然ですが、今会派として出来ることは、2021年度の決算事業報告書として出された報告書が、まだ正確なものかはっきりしていない事実を受け、認定するかしないか判断するだけです。

また、決算書と同じに重要なカルテの訂正版が出てくる可能性があると知りながら、まあ大丈夫と思うからとして、市長の言葉を借りるなら「数字は命である」
と言いながら、数字が不確定なのにも関わらず認定することは筋として難しいです。

多摩市は、議会基本条例9条で決算と予算の連動を謳っています。
市長等が執行した事業等の評価を予算に十分に反映させるため、議会の評価を市長に明確に示さなければならず、市長は議会の評価を予算に十分に反映させるよう努めるとあるのです。

であれば、本来なら、正確な「これです」とカルテの訂正版が出た時点で決算の質疑をすべきだったのです。
日程ありきでの決算質疑に入ってしまったことは議会にもネット・社民の会派にも責任はあるのかも知れません。
今回、審査してしまったたことは事実ですが、それでもネット・社民の会として認定は出来ない事を重ねてお伝えし反対の意見討論と致します。